2018年6月1日金曜日

M


太平洋沿岸から来客
となるとやはり鉄板にご案内
ホルモンって鉄板で食べるんスカ
網で焼くんじゃないんスカ
の声に
網だったらうどん焼できないでしょ

えっ
焼うどんスカ
焼きそばじゃないんスカ

焼きそばじゃないし
焼うどんでもないし
うどん焼だし
と答えを返さず

ちょうどフクイの境界線をまたごうとしていた
名人を境界線から呼び戻す

快く会場まで引き返してきてくれた名人
名人にだけ与えられる M の帽子が神々しい
2枚ある鉄板のうち
こっちの鉄板借りますね
の言葉と共に
数滴ゴマ油を垂らし
しっろい麺を投入

いわゆる
ホルモン焼きにうどん入れて
ホルモン味の
ホルモンのタレの
ホルモンうどんではないのだよ

ホルモンを食べ終えて
全部さらえた鉄板で料理する
うどん焼なのだよ
何十年も蓄積された染み込んだ
鉄板自体が調味料なわけなのだよ
なので鉄板の数だけ
うどん焼の味が存在するのだよ
そしてこの後は
ただひたすらでもなく
放置でもなく
餅を突く時の合いの手のように
程よい合いの手でリズミカルに中心を
時計の反対回りに回す
鉄板に入れたのはしっろい麺以外には
塩コショウはもとより
なんの調味料も入れず
最初のゴマ油数滴と名人の愛の手のみ


仕上がりはこう
そうここのうどん焼は
琥珀色に輝く麺
そして味は
もちろん皆が無言で名人に乾杯

そして名人は
高速で口に運んだ串焼きを
コーラで流し込み
フクイの境界線をまたぐべく
帽子をくるっと回し
Mの文字を後ろに向け
さって行った

ありがとう名人
またもてなす来客の際にはよろしくです
もてなされたい方はぜひご一報ください

0 件のコメント: